酉谷山奥多摩の最深部にある酉谷山(1718m)が太田から南西57キロに見える。
多摩から秩父への「通り谷」に、あるいは酉(西)の方角にあるからとの山名の由来があるが秩父側では山の斜面
が黒木に覆われていることから「黒ドッケ」、「大黒」等と呼ぶ。右に連なる水松山、長沢山から雲取山に至る「長沢背稜」は、ブナ、カエデ、カラマツなどの樹林の中を行く尾根コースとして知られ、秋たけなわの今がとくに素晴らしい。太田からは見えないが、この山々の向こうに「大菩薩峠は上り三里、下り三里……」の書き出しで始まる『中里介山』未完の長編小説の舞台、大菩薩嶺が広がる。明治文壇の才媛『樋口一葉』は古里に思いを寄せ「わが養家は大藤村とて、みわたす限りは天目山、大菩薩峠の山々峰々垣をつくりて…」(ゆく雲)と書いている。山梨百名山公募第三位
、今も昔も人気のある山である。 |
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