「山と川のある町」戦後一世を風靡した石坂洋次郎の物語に、そのまま出てくるような足利の町。そのシンボル朱塗りの織姫神社が山の緑に一際映える織姫山(118メートル)が見える。
別名機神(はたがみ)山ともいい、山稜は月見ヶ岡と云われてきた。足利工業大学付属高校の前名のいわれもそこにあり、昭和三十年代のイガグリ頭の目には、女生徒の清楚で都会的なセーラー服姿は青春小説に出てくるヒロインそのものであった。歴史と文化の伝統に支えられた織都足利は、大正から昭和にかけて「足利銘仙」でその名を高め、戦後はトリコットにより全国を制覇した。あれほど隆盛を極めた織物の出荷額も、今や全工業出荷高のわずか1%で今や見る影もない。すぐ下の寂しくなった本町通
りはかつて両毛の買い物客で賑わい、歩行者天国には道一杯に人が溢れていた。足利の栄光と変遷の時の流れがそこにもある。 |
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